スター・ウォーズ正史 完全時系列ガイド
序論:遥か彼方の銀河系の歴史を紐解く
記録保管庫より:序文
「スター・ウォーズ」サーガは、単なる映画シリーズの枠を超え、数世代にわたって語り継がれる現代の神話として、私たちの文化に深く根付いています。その物語は、実写映画、アニメーション、ドラマシリーズといった多様な媒体を通じて、壮大な銀河の歴史を織りなしてきました。この広大な物語群を個別の作品として捉えるだけでなく、一つの連続した歴史的叙事詩として理解するためには、それらを物語世界の内部時間、すなわち「時系列順」に整理することが不可欠です。
本報告書は、スター・ウォーズ正史(カノン)に属するすべての実写およびアニメーション映像作品を、その世界の歴史の流れに沿って配置し、各作品が持つ物語上の意義と、作品同士の有機的な繋がりを解き明かすことを目的とします。これは単なる作品リストではありません。それぞれの物語が、より大きな歴史のどの地点に位置し、前後の出来事にいかなる影響を与えたのかを分析することで、個々の点(作品)を線(歴史)へと繋ぎ合わせる、包括的な年代記です。この年代記を通じて、読者は銀河の興亡を巡る壮大な旅を追体験し、物語の深層に流れるテーマや因果関係について、より深い理解を得ることができるでしょう。
年表理解の鍵:BBY/ABY紀年法
スター・ウォーズの広大な歴史を正確に把握するためには、銀河標準暦として用いられる「BBY/ABY紀年法」の理解が不可欠です。この紀年法は、銀河史における極めて重要な転換点、すなわち映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』で描かれた「ヤヴィンの戦い」を基点としています 1。
- BBY (Before the Battle of Yavin): 「ヤヴィンの戦い以前」を意味し、この戦いから何年前に出来事が起こったかを示します。数字が大きくなるほど、より過去の時代となります。
- ABY (After the Battle of Yavin): 「ヤヴィンの戦い以後」を意味し、この戦いから何年後に出来事が起こったかを示します。
この紀年法は、反乱同盟軍が初代デス・スターを破壊したという歴史的勝利を銀河史の中心に据えるものであり、帝国の圧政に対する抵抗の象徴的な意味合いを持っています 2。当初はファンコミュニティから生まれた概念でしたが、現在では公式の参考資料でも広く採用されており、各作品の時代設定を精密に特定するための共通言語となっています 2。
公式の時代区分:サーガを巡る道標
ルーカスフィルムは、スター・ウォーズの長大な物語をより理解しやすくするため、歴史をいくつかの主要な「時代(Era)」に区分しています。これらの時代区分は、単なる時間的な区切りではなく、それぞれの時代が持つ政治的、文化的、そしてテーマ的な特徴を反映しており、物語を読み解く上での重要な道標となります 2。本報告書は、この公式の時代区分に沿って構成されています。
- ハイ・リパブリック (The High Republic)
- ジェダイの滅亡 (Fall of the Jedi)
- 帝国による支配 (Reign of the Empire)
- 反乱の時代 (Age of Rebellion)
- 新共和国 (The New Republic)
- ファースト・オーダーの台頭 (Rise of the First Order)
以下のマスタータイムラインは、本報告書で詳述する全作品の概要と、それらがどの時代に属するのかを一望できるようにまとめたものです。
表1:スター・ウォーズ正史 映像作品マスタータイムライン
時系列順 | 作品名 | メディア形式 | 時代区分 | 作中の年代 (BBY/ABY) | (参考) 公開/配信年 |
1 | ヤング・ジェダイ・アドベンチャー | アニメシリーズ | ハイ・リパブリック | c. 232 BBY | 2023 |
2 | アコライト | 実写ドラマ | ハイ・リパブリック | c. 132 BBY | 2024 |
3 | テイルズ・オブ・ザ・ジェダイ (一部) | アニメシリーズ | ジェダイの滅亡 | c. 60 BBY – 32 BBY | 2022 |
4 | エピソード1/ファントム・メナス | 実写映画 | ジェダイの滅亡 | 32 BBY | 1999 |
5 | エピソード2/クローンの攻撃 | 実写映画 | ジェダイの滅亡 | 22 BBY | 2002 |
6 | クローン・ウォーズ (劇場版・TV版) | アニメ映画/シリーズ | ジェダイの滅亡 | 22 BBY – 19 BBY | 2008-2020 |
7 | エピソード3/シスの復讐 | 実写映画 | ジェダイの滅亡 | 19 BBY | 2005 |
8 | テイルズ・オブ・エンパイア (一部) | アニメシリーズ | 帝国による支配 | 19 BBY | 2024 |
9 | バッド・バッチ | アニメシリーズ | 帝国による支配 | 19 BBY – c. 18 BBY | 2021-2024 |
10 | ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー | 実写映画 | 帝国による支配 | c. 13 BBY – 10 BBY | 2018 |
11 | オビ=ワン・ケノービ | 実写ドラマ | 帝国による支配 | 9 BBY | 2022 |
12 | キャシアン・アンドー | 実写ドラマ | 帝国による支配 | 5 BBY – 0 BBY | 2022- |
13 | 反乱者たち | アニメシリーズ | 帝国による支配 | 5 BBY – 1 BBY | 2014-2018 |
14 | ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー | 実写映画 | 帝国による支配 | 0 BBY | 2016 |
15 | エピソード4/新たなる希望 | 実写映画 | 反乱の時代 | 0 BBY | 1977 |
16 | エピソード5/帝国の逆襲 | 実写映画 | 反乱の時代 | 3 ABY | 1980 |
17 | エピソード6/ジェダイの帰還 | 実写映画 | 反乱の時代 | 4 ABY | 1983 |
18 | マンダロリアン (S1-S2) | 実写ドラマ | 新共和国 | c. 9 ABY | 2019-2020 |
19 | ボバ・フェット/The Book of Boba Fett | 実写ドラマ | 新共和国 | c. 9 ABY | 2021 |
20 | マンダロリアン (S3) | 実写ドラマ | 新共和国 | c. 11-12 ABY | 2023 |
21 | アソーカ | 実写ドラマ | 新共和国 | c. 11-12 ABY | 2023 |
22 | スケルトン・クルー | 実写ドラマ | 新共和国 | c. 11-12 ABY | 2024 |
23 | レジスタンス | アニメシリーズ | ファースト・オーダーの台頭 | 34 ABY – 35 ABY | 2018-2020 |
24 | フォースの覚醒 | 実写映画 | ファースト・オーダーの台頭 | 34 ABY | 2015 |
25 | 最後のジェダイ | 実写映画 | ファースト・オーダーの台頭 | 34 ABY | 2017 |
26 | スカイウォーカーの夜明け | 実写映画 | ファースト・オーダーの台頭 | 35 ABY | 2019 |
第一部:共和国の時代 — 光と影の序曲 (c. 232 BBY – 19 BBY)
この時代は、銀河共和国とジェダイ騎士団がその栄華を極めた「ハイ・リパブリック」の輝かしい時代から、シスの暗躍によって内側から腐敗し、クローン大戦という銀河規模の悲劇を経て、最終的に帝国へと変貌するまでの壮大な政治的・精神的悲劇を描いています。一見すると平和で強固に見えた共和国の体制が、実は元老院の腐敗によって蝕まれていたこと 7、そしてジェダイ・オーダーが教条主義に陥り、すぐ足元で台頭する闇を見過ごしてしまったことが、この時代の破滅的な結末へと繋がっていきます。この時代の出来事は突発的に起こったのではなく、何世紀にもわたるシスの周到な計画と、ジェダイの自己満足的な平穏が生み出した必然的な帰結でした。
1.1 ハイ・リパブリック時代
スカイウォーカー・サーガから約200年前、銀河共和国とジェダイ騎士団が黄金時代を迎えていたこの時代は、銀河の辺境領域への探査と開拓が進み、希望と楽観主義に満ちていました 8。しかし、その輝かしい平和の裏側では、後に共和国を崩壊させることになる闇の兆候が静かに芽生え始めていました。
- 『ヤング・ジェダイ・アドベンチャー』(c. 232 BBY): このアニメシリーズは、ハイ・リパブリック時代の最盛期を舞台に、ジェダイの幼き候補生(ヤングリング)たちがフォースの道を学ぶ姿を描いています 12。この作品を通じて、当時のジェダイ・オーダーが持つ前向きで積極的な性質、そして銀河の守護者としての理想的な姿が示されます。
- 『アコライト』(c. 132 BBY): ハイ・リパブリック時代の末期、ジェダイの黄金期に陰りが見え始める頃を舞台にした実写ドラマシリーズです。本作は、銀河に忍び寄るダークサイドの勢力と、ジェダイ・オーダーを脅かす秘密に迫ります 13。理想郷として描かれるハイ・リパブリックと、次代に描かれる腐敗した共和国との間のミッシングリンクを埋める重要な作品であり、「ジェダイの滅亡」時代への直接的な序章としての役割を担っています。
1.2 ジェダイの滅亡
この時代区分は、シスの暗黒卿ダース・シディアスによる巧みな策略が、弱体化した共和国を内側から崩壊させ、クローン大戦の勃発、ジェダイの殲滅、そして銀河帝国の台頭という悲劇的な結末へと導く過程を描きます 2。
- 『テイルズ・オブ・ザ・ジェダイ』(一部エピソード): この短編アニメアンソロジーは、プリクエル時代の主要人物たちの重要な背景を補完します。
- 第2話「正義」& 第3話「選択」 (c. 60 BBY – 44 BBY): 『ファントム・メナス』の数十年前に、若き日のドゥークー伯爵がジェダイ評議会と共和国の腐敗に幻滅していく過程を描写します 16。これは、彼の後のダークサイドへの転落を予見させる重要な物語です。
- 第1話「生と死」 (36 BBY): アソーカ・タノの誕生と、彼女が持つフォースの片鱗が示される幼少期を描きます 16。
- 第4話「シス卿」 (32 BBY): 『ファントム・メナス』の出来事と並行して、ドゥークー伯爵が完全にダークサイドに堕ち、ダース・シディアスと共謀する決定的な瞬間を明らかにします 18。
- 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(32 BBY): スカイウォーカー・サーガの幕開けとなる作品。辺境の惑星ナブーを巡る通商連合との紛争をきっかけに、1000年ぶりにシスの復活が明らかになります。ジェダイ・マスターのクワイ=ガン・ジンと弟子のオビ=ワン・ケノービは、砂漠の惑星タトゥイーンで奴隷の少年アナキン・スカイウォーカーと出会います。アナキンに規格外のフォースの才能を見出したクワイ=ガンは、彼こそがフォースにバランスをもたらすとされる伝説の「選ばれし者」であると確信します 7。
- 『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(22 BBY): 『ファントム・メナス』から10年後。パドメ・アミダラ元老院議員への暗殺未遂事件をきっかけに、青年へと成長したアナキン・スカイウォーカーは彼女と再会し、禁断の恋に落ちます。一方、オビ=ワン・ケノービは調査の過程で、共和国のために秘密裏に製造されていたクローン軍の存在と、ドゥークー伯爵が率いる分離主義勢力の脅威を突き止めます。この対立が、銀河全土を巻き込む「クローン大戦」の引き金となりました 25。
- 『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(劇場版 & TVシリーズ)(22 BBY – 19 BBY): 『エピソード2』と『エピソード3』の間の3年間にわたる壮絶な戦争を描いた、極めて重要なアニメーションシリーズ。プリクエル時代を理解する上で、このシリーズは不可欠な補完材料です。アナキン・スカイウォーカーは、映画で描かれた未熟な青年から、パダワン(弟子)であるアソーカ・タノを指導する、尊敬される戦争の英雄へと成長を遂げます。オビ=ワンとの師弟の絆もより深く描かれ、後の裏切りの悲劇性を増幅させています 26。また、キャプテン・レックスをはじめとする個性豊かなクローン・トルーパーたちの人間性や、戦争の政治的複雑さが詳細に描かれ、物語世界に圧倒的な深みを与えています 29。
- 『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(19 BBY): クローン大戦とプリクエル三部作の悲劇的なクライマックス。最高議長パルパティーンは、正体であるシスの暗黒卿ダース・シディアスとしての最終計画を実行します。彼はジェダイを国家の反逆者として殲滅する「オーダー66」を発令し、同時にアナキン・スカイウォーカーをダークサイドへと誘惑します。アナキンはダース・ベイダーへと変貌し、共和国は銀河帝国へと再編され、パルパティーンは皇帝として銀河の頂点に君臨します。物語は、アナキンの子供であるルークとレイアが生まれ、帝国から守るために引き離されるところで幕を閉じます 25。
- 『テイルズ・オブ・ザ・ジェダイ』 & 『テイルズ・オブ・エンパイア』(一部エピソード):
- 『テイルズ・オブ・ザ・ジェダイ』第5話「修行は実践なり」: クローン大戦中のアソーカの訓練風景と、『シスの復讐』の出来事と同時進行で描かれるオーダー66からの脱出劇を追体験できます 16。
- 『テイルズ・オブ・エンパイア』第1話「恐怖の道」: クローン大戦中に起きた、ダソミアのナイトシスターへの大虐殺を描いています 31。
- 『テイルズ・オブ・エンパイア』第4話「献身」: ジェダイ・パダワンであったバリス・オフィーがオーダー66を生き延び、直後に帝国軍の尋問官として勧誘される様子が描かれます 31。
第二部:帝国による支配 — 暗黒の時代と希望の萌芽 (19 BBY – 0 BBY)
パルパティーン皇帝による鉄の支配が銀河を覆った約20年間。この「暗黒の時代」は、生き残ったジェダイが狩られ、希望が失われたかのように見えた時代です。しかし、その圧政の闇の中から、やがて銀河を解放することになる反乱の火種が、各地で静かに、そして力強く燃え上がり始めます。この時代の物語群は、反乱同盟軍が一夜にして結成された英雄的な組織ではなく、絶望の中から生まれた、様々な背景を持つ個人や小規模なグループが、長い年月をかけて少しずつ合流していった苦難の過程を描き出しています。
『バッド・バッチ』は共和国から帝国への冷酷な移行期を、『オビ=ワン・ケノービ』は生き残ったジェダイの精神的苦痛を、『キャシアン・アンドー』は全体主義国家に対抗するための諜報活動の道徳的曖昧さを、そして『反乱者たち』は一つの反乱分子がより大きな運動へと成長していく希望の物語を、それぞれ描き出しています。これらの物語を時系列に沿って追うことで、単なる英雄譚ではない、現実的で痛みを伴う「反乱のプロセス」そのものが浮かび上がってきます。
2.1 帝国の黎明期とジェダイ狩り
帝国の成立直後、銀河は恐怖によって支配され、皇帝の尖兵であるダース・ベイダーと尋問官たちは、オーダー66を生き延びたジェダイの残党を執拗に追い詰め、抹殺していきました。
- 『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』(19 BBY – c. 18 BBY): オーダー66の直後から始まるこのアニメシリーズは、遺伝子操作によって特殊な能力を持つクローン部隊「クローン・フォース99」、通称「バッド・バッチ」の物語です。彼らは帝国への忠誠を拒否し、追われる身として銀河を放浪します。その旅を通じて、クローン・トルーパーが徴兵されたストームトルーパーへと置き換えられていく帝国の非情な体制転換と、圧政下に置かれた銀河の姿を目の当たりにします 25。
- 『テイルズ・オブ・ザ・ジェダイ』 & 『テイルズ・オブ・エンパイア』(一部エピソード):
- 『テイルズ・オブ・ザ・ジェダイ』第6話「決意」: オーダー66の後、隠遁生活を送っていたアソーカが、帝国の圧政に苦しむ人々を目の当たりにし、反乱軍の情報提供者「フルクラム」として活動を開始する第一歩を描きます 18。
- 『テイルズ・オブ・エンパイア』第5話「現実」 & 第6話「出口」: 尋問官となったバリス・オフィーが帝国の非道な任務に従事する中で葛藤し、最終的に帝国と決別するまでの道のりを描いています 31。
- 『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(c. 13 BBY – 10 BBY): 銀河で最も有名な密輸業者の若き日を描くこの映画は、ハン・ソロが故郷コレリアを脱出し、帝国軍の兵士として短い期間を過ごし、生涯の相棒となるチューバッカや悪友ランド・カルリジアンと出会い、そして伝説の宇宙船ミレニアム・ファルコンを手に入れるまでの冒険譚です。帝国の支配下で活発化する裏社会の様子を鮮やかに描き出しています 15。
- 『オビ=ワン・ケノービ』(9 BBY): 『シスの復讐』から10年。かつての弟子アナキン・スカイウォーカーとの死闘で心身ともに打ちのめされたオビ=ワン・ケノービは、惑星タトゥイーンで隠遁生活を送りながら、若きルーク・スカイウォーカーを遠くから見守っていました。しかし、レイア・オーガナ姫の誘拐事件をきっかけに、彼は再びライトセーバーを手に取り、過去のトラウマと、そしてダース・ベイダーへと変貌したかつての弟子と対峙することを余儀なくされます 25。
2.2 反乱の胎動
帝国の圧政が強まるにつれ、銀河の各地で散発的な抵抗運動が起こり始めます。それらはやがて一つの大きな流れとなり、反乱同盟軍の結成へと繋がっていきます。
- 『キャシアン・アンドー』(5 BBY – 0 BBY): 冷笑的な盗賊であったキャシアン・アンドーが、いかにして反乱同盟軍の有能な情報部員へと変貌を遂げたのかを描く、重厚なスパイスリラー。このシリーズは、理想だけでは成り立たない反乱活動の現実、すなわち道徳的なジレンマや個人的な犠牲を伴う諜報活動の過酷さを、徹底的にリアルな視点で描き出しています 25。
- 『スター・ウォーズ 反乱者たち』(5 BBY – 1 BBY): 辺境の惑星ロザルを拠点とする宇宙船「ゴースト」のクルーたちの活躍を描くアニメシリーズ。フォースの素質を持つ孤児エズラ・ブリッジャーが、オーダー66を生き延びたジェダイ、ケイナン・ジャラスに弟子入りし、成長していく姿が物語の中心となります。本作は、銀河各地に点在していた個別の反乱分子が、いかにして一つの「反乱同盟軍」として組織化されていったかという重要な歴史を描くと同時に、アソーカ・タノやスローン大提督といった人気キャラクターを再び物語の舞台へと引き戻しました 25。
- 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(0 BBY): 『エピソード4/新たなる希望』の冒頭に繋がる、決死の物語。帝国軍の最終兵器「デス・スター」の設計図を奪取するという、ほぼ生還不可能とされる任務に挑んだ名もなき英雄たちの姿を描きます。デス・スターの主任設計者であるゲイレン・アーソの娘、ジン・アーソが、寄せ集めの反乱軍特殊部隊「ローグ・ワン」と共に、絶望的な作戦に身を投じます。この映画の結末は、『新たなる希望』のオープニングシーンに完璧に繋がり、二つの時代を見事に橋渡ししています 30。
第三部:銀河内戦 — 反乱の時代 (0 BBY – 5 ABY)
この時代は、スター・ウォーズ・サーガの心臓部であり、オリジナル三部作で描かれた、反乱同盟軍と銀河帝国との全面戦争の時代です。それは単なる一時代ではなく、銀河の歴史そのものを定義する物語的、そして年代的な支点です。BBY/ABY紀年法が「ヤヴィンの戦い」を基点としていること自体が、この時代の出来事がサーガ全体の中心であることを物語っています 1。ヤヴィンでの奇跡的な勝利、ベスピンでの衝撃的な真実の暴露、そしてエンドアでの贖罪と解放。これらは、この銀河における foundational myth(創世神話)であり、プリクエル三部作がその悲劇的な背景を、そしてシークエル三部作がその複雑な遺産との格闘を描くための、揺るぎない礎となっています。
- 『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(0 BBY): すべてが始まった物語。砂漠の惑星タトゥイーンで暮らす農家の青年ルーク・スカイウォーカーは、偶然手に入れたドロイドをきっかけに、自らに流れるジェダイの血と運命を知り、反乱同盟軍に身を投じます。レイア・オーガナ姫、密輸業者のハン・ソロ、ウーキー族のチューバッカ、そしてドロイドのC-3POとR2-D2といった仲間たちと共に、帝国の究極兵器デス・スターの破壊に成功します。この「ヤヴィンの戦い」での勝利は、反乱軍にとって初めての大きな希望の光となりました 33。
- 『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(3 ABY): ヤヴィンの戦いから3年後。帝国軍の猛烈な反撃により、反乱軍は氷の惑星ホスからの撤退を余儀なくされます。ルークはフォースの修行を完成させるため、伝説のジェダイ・マスター、ヨーダが隠遁する惑星ダゴバへと向かいます。一方、ハンやレイアたちはダース・ベイダーの執拗な追跡を受け、クラウド・シティで罠にはまります。物語のクライマックスで、ルークはダース・ベイダーと対峙し、自身の血筋に関する衝撃的な真実を知ることになります 33。
- 『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(4 ABY): オリジナル三部作の壮大な完結編。反乱同盟軍は、建造中の第2デス・スターを破壊するため、エンドアの森の月に総力を挙げた決戦を挑みます。ルーク・スカイウォーカーは、父であるダース・ベイダーと皇帝パルパティーンとの最後の対決に臨み、父をダークサイドから救い出し、フォースにバランスをもたらします。アナキン・スカイウォーカーの贖罪と皇帝の死、そして第2デス・スターの破壊によって、帝国は崩壊し、銀河に自由がもたらされました 33。
第四部:新共和国とファースト・オーダーの台頭 — 新たな秩序と忍び寄る脅威 (c. 5 ABY – 35 ABY)
この時代は、帝国の崩壊後に訪れた混乱期と、新たなる希望の象徴である「新共和国」の設立、そしてその平和の裏で、帝国の残滓から静かに、しかし確実に力を蓄えていった「ファースト・オーダー」の台頭を描きます。この時代の物語群は、歴史がいかに繰り返されるか、そして平和の維持がいかに困難であるかを示唆しています。ディズニー・プラスで展開されるドラマシリーズは、新共和国が旧共和国と同じ過ちを犯している様を浮き彫りにします。すなわち、大規模な軍縮、官僚主義の蔓延、そして辺境領域での脅威の軽視です 60。この制度的弱点が、モフ・ギデオンのような帝国残党が活動するための力の空白を生み出し、ファースト・オーダーが秘密裏に軍事力を増強することを可能にしました。『ジェダイの帰還』での輝かしい勝利が、なぜ『フォースの覚醒』における絶望的な状況へと繋がったのか。この時代の物語は、その間の因果関係を解き明かす重要な鍵となります。
4.1 新共和国時代
エンドアの戦いでの勝利の後、反乱同盟軍は新共和国を樹立しますが、銀河全土に平和と秩序をもたらすという課題はあまりにも大きく、特にアウター・リムでは法の支配が及ばない無法地帯が広がっていました。
- 『マンダロリアン』(シーズン1 & 2)(c. 9 ABY): エンドアの戦いから5年後。孤高のマンダロリアンである賞金稼ぎ、ディン・ジャリンは、ある依頼でフォースの力を秘めた謎の幼子「グローグー」と出会い、彼を保護することになります。この出会いが、彼を銀河中の無法者や、グローグーを狙うモフ・ギデオン率いる帝国残党から追われる逃避行へと導きます 63。
- 『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(c. 9 ABY): 『マンダロリアン』と時間軸を同じくし、物語が交差するこのシリーズは、伝説の賞金稼ぎボバ・フェットが、かつてジャバ・ザ・ハットが支配したタトゥイーンの裏社会を掌握していく物語です。特に中盤のエピソードは、ディン・ジャリンとグローグーのその後を描く「マンダロリアン シーズン2.5」とも言うべき内容であり、『マンダロリアン』シーズン3を鑑賞する上で必見の物語となっています 33。
- 『マンダロリアン』(シーズン3)(c. 11-12 ABY): グローグーと再会したディン・ジャリンは、マンダロリアンの教義における自身の罪を贖うため、帝国によって破壊された故郷マンダロアへと巡礼の旅に出ます。このシーズンでは、マンダロリアンの文化と政治が深く掘り下げられ、モフ・ギデオン率いる帝国残党との決戦が描かれます 12。
- 『アソーカ』(c. 11-12 ABY): アニメ『反乱者たち』の物語を直接引き継ぐこのシリーズは、元ジェダイのアソーカ・タノが、銀河帝国最高の戦略家であったスローン大提督の帰還という新たな脅威を調査する物語です。『反乱者たち』の主人公たちである「ゴースト」のクルーが再集結し、フォースの神話を銀河の外へと広げる、壮大な物語が展開されます 25。
- 『スケルトン・クルー』(c. 11-12 ABY): 『マンダロリアン』や『アソーカ』と同じ時代を舞台に、銀河で迷子になった子供たちが故郷へ帰るための冒険を描くシリーズです 59。
4.2 ファースト・オーダーの台頭
新共和国の平和は長くは続きませんでした。帝国の残党は銀河の未知領域で秘密裏に再編成され、より過激で強力な軍事組織「ファースト・オーダー」として復活。新共和国に壊滅的な打撃を与え、銀河は再び戦火に包まれます。
- 『スター・ウォーズ レジスタンス』(34 ABY – 35 ABY): 新共和国の若きパイロット、カズダ・ジオノが、ポー・ダメロンによってレジスタンスにスカウトされ、台頭するファースト・オーダーを探るスパイとして活動する姿を描くアニメシリーズ。その時間軸はシークエル三部作の映画と重なり、それらの出来事の背景や文脈を補完する役割を果たします 25。
- 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(34 ABY): 帝国の崩壊から30年。帝国の灰の中から新たな脅威「ファースト・オーダー」が台頭しました。砂漠の惑星で廃品回収をして暮らす孤独な若者レイ、ファースト・オーダーを脱走したストームトルーパーのフィン、そしてレジスタンスのエースパイロットであるポー・ダメロン。彼らは運命的な出会いを果たし、レイア・オーガナ将軍率いるレジスタンスと共に、行方不明となった伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーを探す旅に出ます 33。
- 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(34 ABY): 『フォースの覚醒』の直後から物語は始まります。ファースト・オーダーの猛追を受け、壊滅寸前に追い込まれたレジスタンスは、必死の逃避行を続けます。一方、レイは隠遁していたルーク・スカイウォーカーを探し出し、ジェダイの修行を受け、戦いに復帰するよう説得を試みます。その過程で、ファースト・オーダーの最高指導者となったカイロ・レンとの間に、フォースを通じた不思議な繋がりが深まっていきます 33。
- 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(35 ABY): スカイウォーカー・サーガ全9部作の最終章。死んだと思われていた皇帝パルパティーンが復活し、ファースト・オーダーの背後で糸を引いていた真の黒幕であったことが明らかになります。レジスタンスは銀河の自由を信じる全ての仲間を結集し、シスを永久に葬り去るための最後の決戦に挑みます。そしてレイは、自らの謎に満ちた血筋と、スカイウォーカー家の遺産を受け継ぐ者としての運命に、最後の決着をつけます 33。
特別考察:複雑な物語群の深層分析
スター・ウォーズの物語は、単一の時系列に沿って展開されるものばかりではありません。特に『クローン・ウォーズ』や「マンダロリアン・ユニバース」と称される作品群は、その複雑な構造を理解することで、より深い鑑賞体験が可能となります。
5.1 『クローン・ウォーズ』完全視聴ガイド
アニメシリーズ『クローン・ウォーズ』は、その製作スタイルから、物語の時系列が放送順とは一致しないという特徴を持っています。これは、物語が特定のテーマやキャラクターに焦点を当てたアンソロジー形式で制作されたためです 82。そのため、放送順に視聴すると、前のエピソードで死亡したキャラクターが次のエピソードで登場するなど、混乱を招く可能性があります。
物語の連続性とキャラクターの成長(特にアナキン、アソーカ、そしてクローン兵たち)を正しく理解するためには、ルーカスフィルムが公式に提示している「時系列順」での視聴が不可欠です。この視聴順に従うことで、本作は単なる短編集から、3年間にわたる戦争の変遷を追う重厚な一大戦記へと姿を変えます。
表2:アニメシリーズ『クローン・ウォーズ』時系列視聴順リスト
時系列順 | エピソードタイトル | シーズン・話数 | 主要ストーリーアーク | |
1 | 猫とネズミ | S2 E16 | クリストフシスの戦い | |
2 | 隠された敵 | S1 E16 | クリストフシスの戦い | |
3 | スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ (劇場版) | 映画 | テスの戦い | |
4 | クローン士官候補生 | S3 E1 | ドミノ分隊 | |
5 | 補給線 | S3 E3 | ライロスの戦い | |
6 | アンブッシュ | S1 E1 | トイダリア | |
7 | マレボランス襲来 | S1 E2 | マレボランス | |
8 | マレボランスの影 | S1 E3 | マレボランス | |
9 | マレボランス破壊 | S1 E4 | マレボランス | |
10 | ルーキーたち | S1 E5 | ドミノ分隊 | |
… | … | … | … | |
126 | 不良分隊 | S7 E1 | バッド・バッチ | |
127 | 遠いこだま | S7 E2 | バッド・バッチ | |
128 | キーラダックの翼 | S7 E3 | バッド・バッチ | |
129 | 未完の仕事 | S7 E4 | バッド・バッチ | |
130 | 古き友は忘れ去られ | S7 E9 | マンダロア包囲戦 | |
131 | ファントム・アプレンティス | S7 E10 | マンダロア包囲戦 | |
132 | 砕かれた絆 | S7 E11 | オーダー66 | |
133 | 勝利と死 | S7 E12 | オーダー66 | |
(注:全133話のリストは長大であるため、ここでは構成例として抜粋して掲載しています。完全なリストは公式情報源をご参照ください 82) |
5.2 マンダロリアン・ユニバースの交差点
新共和国時代を舞台に展開される『マンダロリアン』、『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』、そして『アソーカ』は、単なるスピンオフ作品ではなく、相互に深く関連し合う、一つの大きな物語を形成しています 68。これらの作品群は、スター・ウォーズにおける新たなストーリーテリングの形を示しています。
- 主要な交差する物語:
- グローグーの運命: 『マンダロリアン』シーズン2の終盤でルーク・スカイウォーカーと共に去ったグローグーのその後は、『マンダロリアン』シーズン3ではなく、『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』の中で描かれ、ディン・ジャリンとの再会を果たします。
- ダークセーバーとマンダロアの未来: マンダロリアンの指導者の象徴である「ダークセーバー」を巡る物語は、『マンダロリアン』全シーズンを通じてディン・ジャリンとボ=カターン・クライズの関係性の中心的なプロットとなっています。
- スローン大提督の帰還: 『マンダロリアン』シーズン2でのアソーカ・タノの登場は、彼女自身の単独シリーズと、アニメ『反乱者たち』から続くスローン大提督の探索という物語への直接的な布石となっています 25。
- 推奨される視聴順: これらの作品群の物語を完全に理解するためには、個々の作品を時系列に挿入するのではなく、公開(配信)された順番で視聴することが極めて重要です。後のシリーズは、前のシリーズで起きた出来事を前提として物語が構築されているためです。したがって、推奨される視聴順は以下の通りです 59。
- 『マンダロリアン』シーズン1 & 2
- 『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』
- 『マンダロリアン』シーズン3
- 『アソーカ』
結論:終わりなきサーガの地平線
完成した記録
本報告書は、ハイ・リパブリックの黄金時代からシークエル三部作におけるシスに対する最終的な勝利まで、スター・ウォーズの壮大な歴史を時系列に沿って巡る旅路を記録してきました。大ヒット映画から短編アニメーションに至るまで、一つ一つの作品が、いかにして一つの巨大なタペストリーを織りなす不可欠な糸であるかを示してきました。各時代は独自のテーマと雰囲気を持ちながらも、希望と絶望、光と闇、秩序と混沌といった普遍的なテーマによって、すべてが繋がっています。
時系列というレンズを通してこのサーガを眺めることで、私たちは個々の物語の背後にある壮大な因果関係を理解することができます。ジェダイの傲慢さが帝国の台頭を招き、名もなき英雄たちの犠牲が新たな希望を生み、そしてその希望を守るための戦いが、次世代の英雄たちへと受け継がれていく。これは、スカイウォーカー家という一つの家族の物語であると同時に、銀河全体の自由を巡る、終わりなき闘争の記録なのです。
銀河の未来
スカイウォーカー・サーガは完結しましたが、遥か彼方の銀河系の歴史は、今もなお紡がれ続けています。ジェダイの起源を探る「ジェダイの夜明け(Dawn of the Jedi)」時代(c. 25,000 BBY)を舞台にした映画や、レイが「新ジェダイ・オーダー(New Jedi Order)」を築く未来(c. 50 ABY)を描く映画の製作が発表されており、このサーガの地平線はさらに広がり続けています 6。
これは、スター・ウォーズという物語が、特定のキャラクターや時代に留まらない、無限の可能性を秘めた宇宙であることを示しています。我々記録保管庫の役割は、これからも紡がれていく新たな歴史を記録し、整理し、未来の世代へと伝えていくことです。この記録庫の扉が、真に閉ざされることはないでしょう。フォースと共にあらんことを。